「筋の良い道を、自分の納得できる形で進む」

インタビュー取材

“会社に依存しない生き方”を目指して、コンサルタントとして独立。紆余曲折を経て、今では紹介だけで仕事が回るまでに。本多社長が語る”筋の良い”生き方とは――。AIの台頭や急激な社会変化に不安を感じる若者たちへ、経営者としての哲学を伺いました。

本多 博昭(ほんだ ひろあき)
株式会社プログレス・アイ 代表取締役
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前回取材からの深掘り

日野
日野

本多社長が独立されるまでの経緯を改めてお聞かせください。

本多社長
本多社長

大学の就職活動から振り返ると、いろんな会社の説明会に行って、OB面談もする中で、ふと思ったんです。大企業や有名企業に行っても意味がないな、と。何十年も企業が安定的に存続できるかといえば、そうとは限らない。人よりも企業の寿命の方が短い時代なので、会社に依存するのは危険だと。40代、50代になって会社が倒産したり、買収されたり、リストラに遭ったりした時に、果たしてやっていけるのか、と考えました。そこで方向転換して、世の中がどう変わろうが自分の力で生きていける能力を身につけようと。業界を見た時にコンサル業界が視野に入ってきました。他社へのアドバイスや助言ができるということは、経営もできるんじゃないかという短絡的な感覚もあって(笑)。そうしてコンサル会社に入社しましたが、元々定年まで勤めるつもりはなく、いずれは独立しようという漠然とした考えを持っていたので、14年半勤めた後に退職したんです。

日野
日野

それは、もう自分でできるという確信があったからですか?

本多社長
本多社長

そんな立派なものではないですけどね。組織なので、自分のしたいこととやらなければいけないことにギャップがあって。正直、伸び悩んでいた部分もありました。途中までは成長を実感できたましたが、だんだん頭打ちになってきて、環境を変える必要があると感じたんです。前職では一時JAコンサルティングを担当していましたが、会社が撤退した分野でしたので、独立後の事業として需要もあり問題ないと判断しました。当初からJA業界に特化するつもりはありませんでしたが、結果として今でもメイン事業となっています。

日野
日野

前回お話を伺った時には、創業後10年ほどは苦労されたものの、今では営業活動をしなくても紹介だけで仕事が回っているとのことでした。そこへ辿り着くまでにどのようなことを意識されていたのでしょうか。

本多社長
本多社長

真面目に一生懸命やっていれば、見てくれている人はいますね。求められているレベル以上のアウトプットをする。「これだけのお金でこれだけのことしてもらえるんだ」「こんな成果が出るんだ」と思ってもらえれば、次もお願いしようということになりやすい。最初は全然芽が出なかったんですけど、ある時期からグングン上がっていきました。成長曲線ってよく言いますが、初めはなかなか浮き上がらない。で、みんなここで諦めちゃう。けど、諦めずにやりきったら、上に上がるというのを自分で体験しました。これは結果論で、運や出会いもあります。万人に勧められる方法とは言えませんが、私の場合、なんとかギリギリいけたということですね。

正解はない – 魂レベルで納得できることを追求する

日野
日野

経営者としての哲学について、本多社長が大切にされている考えや最近の気づきをお聞かせください。

本多社長
本多社長

万人に当てはまる正解はないと思っているんです。自分が一番腑に落ちること、それが自分にとっての正解。魂レベルで共感できることが正解だと考えています。そういう基準で選択したから上手くいった気がしますね。例えば、コンサルティングの現場でも、ノウハウやテクニックを求める人が多いんです。「どうやったらうまくいくんですか」「どうやったら売り上げが上がりますか」と。でも、そんなことがわかっていたら、世の中の誰も悩まないですよね。答えはないんです。でも、筋のいいことであれば、全部正解なんです。

日野
日野

その「筋がいい」というのは、どういう基準なのでしょうか。

本多社長
本多社長

私の言い方ですが、筋がいいというのは世の中に貢献できるとか、私もよくて、あなたもいいという相乗効果があるということ。一方で、筋が悪いというのは、トレードオフな仕事。自分が儲かると相手が犠牲になるとか、競争で相手を押しのけて勝たなければならないようなこととか。別に悪いとは言いませんが、個人的には合わないですね。筋のいい事業であれば、やりきった時に必ず成長が見えてくる。例えば、営業マンから「どうやったらもっと売れますか」という質問をよく受けます。テクニックはあるにはありますが、下心は大体見透かされます。そんなので苦しむくらいなら、テクニックを全部捨てて、自分の親に話すように話してみてはどうですかと伝えています。普通の親子関係なら、自分の母親をごまかして売ろうとは思わないでしょう。一番してあげたいように言ってあげる。それが結局、回り回って一番の近道になるんです。

日野
日野

結果を求めすぎないということでしょうか。

本多社長
本多社長

もちろん結果を追い求めないとダメなんですが、結果を気にしすぎると逆に失敗するというのが私の考えです。やることをやったら手放す。結果はコントロールできないでしょう。どれだけ悩んでも変わらない。「うまくいくかな」「受注が上がるかな」と考えても意味がない。それより、できることに焦点を当てる。例えば、お客様に連絡を一本入れてアドバイスするとか、フォローするとか、そういう方が生産的じゃないですか。

自分の魂に正直に生きる

日野
日野

現在、AIの台頭により仕事を奪われるのではないかという不安や、社会の急激な変化への戸惑いを感じている若者も多いと思います。そうした人たちに向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

本多社長
本多社長

自分が一番魂レベルで納得できること、その方向に行くのがいいと思います。流行りや周りの意見のみで判断しないことですね。例えば、SDGsが流行っているから、そっちの方がそれっぽくかっこいいからといって選ぶのではなく。本気でそうならいいけれど、そうでないなら嘘のマインドになってしまう。自分に常に問いを投げかけていれば、答えはどこかで返ってきます。すぐにはわからなくても、例えば「どういう時に時間を忘れて夢中になれたか」とか「徹夜しても全然元気でやれるのはどんな時か」とか「腹の底から力が湧いてくる場面はどんな時か」とか。そういうのを繋ぎ合わせれば、自分のやるべき方向性が見えてくるんじゃないでしょうか。

日野
日野

その「魂レベルで納得できること」を見つけるのが、個人的にはすごく難しいと感じるのですが……。

本多社長
本多社長

頭で考えるとちょっと違うんです。損得とか、流行り、トレンドではなくて。どういう時に自分のエネルギーが湧いてくるか。例えば、人を応援する方が頑張れる人もいれば、自分が先頭に立った時に頑張れる人もいる。一人でやるのが好きな人もいれば、大勢でやるのが好きな人もいる。そういった判断軸で自分を見つめ直してみる。現時点での方向性が決まれば、それでいい。人は成長するし、認識も変わってきます。だから、その時点でのベクトルを決めて動いてみる。それが合っているかどうかは、動いてみないとわからないですからね。

日野
日野

一旦方向性を決めたら、とりあえず動いてみることが大事ということですね。

本多社長
本多社長

そうです。「自分はこれが伸びるんじゃないか」「これが向いているんじゃないか」と思ったら、まずはその方向に定めて、とことんやってみる。「あれ?なんか違和感があるな」と思ったら、また方向を変えればいい。その繰り返しの中に、魂レベルで納得できること、腑に落ちることが出てくるかもしれない。
特に若い頃は、あまり自分で選り好みせずに、来たものをどんどんやっていくというのも一つの手です。自分が何に向いているかなんて、やってみないとわからないですからね。同じことをやっていても、その意味づけが違えば、モチベーションも変わってくる。だから、これまで自分が喜びを感じてきた瞬間を大切にしながら、どんどん動いてみて欲しいですね。

最後の方にいただいた、問いを自分に投げかけながら、自分が腑に落ちることを見つけていく、そしてそのベクトルを信じて行動、改善をするというメッセージが特に素敵だなと感じました。

<取材・執筆=日野、写真=品川>

株式会社プログレス・アイHP:https://progress-eye.co.jp/

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